01.著者に会いたい

塚本邦雄さん デビュー50年、全集完結
作歌は想像力を鼓舞する

1巻が600ページを超える全16巻の「塚本邦雄全集」(ゆまに書房)が6月に完結し、11月11日には、大阪市内のホテルで祝賀会が開かれた。生前に「全集」を作ってしまうと、作歌がやんでしまうのでは、という周囲の心配をよそに、うたい続けている。
「コンスタントに? いえ、自由自在です。テーマがあればいくらでも歌は作れる。1晩に300首できることもあれば、1週間で5首のこともある。まあ、後者の方が楽ですな」と言って、高笑い。
去年8月、胆管結石と急性肝炎を併発し、入院。死線をさまよい、10キロ以上やせた。今、往時の体重を取り戻し、ふっくらつややかに見える。しかし、博覧強記で鳴らした記憶が混乱することがあり、20年続けた歌会も2月で辞めた。
昨秋からつけはじめた自筆のノートには数百首の書き付け。結社誌「玲瓏」の9月の巻頭歌はその一部だ。
「而立、不惑、夢のごとくに過ぎし頃、生温き夏の風物の中」「他人に問はれて七十歳代の末と答ふ あと十年を経(ふ)るとも同一」。長男で作家の青史さんが「やはり、老いや死が歌のテーマになってきているようです」と解説すると、すぐに、横から大きな声が飛んだ。「私は生活短歌は一切作っておりません! 短歌はルポルタージュではない。もっと抽象的で想像力を鼓舞するものです」
第1歌集『水葬物語』から今年でちょうど半世紀。その歌は古びるところなく、私たちの前にある。「万國旗つくりのねむい饒舌がつなぐ戦争(いくさ)と平和と危機と」。地球規模の「テロ」と「報復」が続く今日、歌の偉大さをたたえるべきか、進歩しない人の営みを嘆くべきか。

朝日新聞2002年