05.前衛短歌の第一人者 塚本邦雄氏 死去

塚本邦雄近代短歌に前衛的な手法を持ち込み、現代短歌の確立を担った歌人で、元近畿大学教授の塚本邦雄氏が9日午後3時54分、呼吸不全のため大阪府守口市の病院で亡くなった。84歳。滋賀県出身。通夜は12日午後6時、告別式は13日午前11時半、同市荒本西1ノ18ノ2、東大阪玉泉院で。喪主は長男で作家の青史氏。葬儀委員長は現代歌人協会理事長、篠弘氏。

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大阪の商社に勤務するかたわら、昭和22年から前川佐美雄氏に師事して歌作に励んだ。26年、第1歌集『水葬物語』を刊行。以後、暗示に富んだ表現や韻律を志向する歌風で、近代短歌とは異なった現代的な前衛短歌を模索した。31年の第2歌集『装飾楽句』で歌壇に衝撃を与え、同じ年に大岡信氏と交わした短歌の方法についての論争は、前衛短歌を広めるきっかけとなった。第3歌集『日本人霊歌』で34年、現代歌人協会賞を受賞。

44年の『感幻楽』では中世の美をめざし、以後、さまざまな短歌の美学を展開。47年には小説『紺青のわかれ』を刊行するなど、多彩な分野に活躍の場を広げた。晩年も幻想的な歌を詠み続け、「言葉の魔術師」とも称された。

平成元年から11年まで、近畿大学文芸学部教授を務めた。2年に紫綬褒章、4年に『黄金律』で斎藤茂吉短歌文学賞、5年には『魔王』で現代短歌大賞を受賞した。

7年から16年まで、「平成の歌会」(産経新聞社主催)の選者を務めた。短歌結社「玲瓏(れいろう)」主宰。

◆◆◆歌人、岡井隆さんの話
「私や寺山修司らと前衛短歌運動を行った仲間だが、塚本さんは年上で指導者という感じだった。ありのままの現実をうつし取るという従来の短歌に敢然と立ち向かい、虚構の世界を持ち込んだ。非常に華麗な言葉の才能を展開されたが、体制に順応しない改革は苦しい戦いでもあった。信念を貫かれた一生だった。全集15巻も出て、これからその仕事が評価され検討されることになるだろう」

産経新聞
6月10日(金) 大阪夕刊