10.今朝のうた

◇皐月(さつき)待つことは水無月待ちかぬる皐月待ちゐし若者の信念--塚本邦雄

塚本邦雄の主宰する歌誌『玲瓏』が創刊されて今年でちょうど20年になる。毎年11月に「全国の集い」が大阪で開催され、ゲストの歌人の講演やシンポジウムが行われる。今年は11月20日、岩田正さんの記念講演のほか中堅世代の松平盟子さんと穂村弘さんの討論が予定されている。

松平さんも穂村さんも、直接に塚本邦雄の影響を受けた歌人ではない。むしろ塚本作品から離れることで自らの歌世界を構築しているといっていい。そうした「若い」世代が、「反写実」を最晩年まで貫いた稀有(けう)な歌人の作品世界をどう読み解くか、<ポスト塚本邦雄>はどうあるのか、興味深いことである。

今年はこの集いがはからずも「追悼集会」となってしまったが、20周年記念の会は予定通り開かれる。ほぼ毎年、私もこの会に招かれ、お元気な歌人の姿に接するのが楽しみだったが、それはかなわぬこととなってしまった。

ところでこの歌は、『玲瓏』の最新号(61号)の巻頭に載っている。皐月は本来は陰暦5月だが、5月は塚本邦雄の盟友だった寺山修司も愛した月だ。すべてのものが芽吹き、緑の色を増し、それとともにどこかに死への怖れをも内包する季節は、若者の季節だ。湿潤とした6月とは違う。塚本邦雄が、当時の湿気の多い歌壇や短歌作品に敢然と挑戦したように、現代の若い歌人も「5月のような信念を持ってほしい」と願ったのであろう。

手元の原稿用紙に記された新作。葬儀の当日、篠弘さんもこの歌を紹介した。(酒井佐忠・専門編集委員)

毎日新聞 2005年6月26日 東京朝刊分